栄養療法

栄養療法とは​

栄養療法とは分子整合栄養医学とも言われており、血液検査で取得したデータを分析したうえで、食生活を改善し、サプリメントなども含めて栄養摂取を見直していく方法です。

現代社会では栄養摂取のかたよりが顕著な人が増えており、その結果として高血圧や糖尿病などの生活習慣病や、自律神経失調症などが現れることがあります。
また、パニック障害やうつなどの心療内科を必要とする不調でも、栄養療法を取り入れることで状態改善できる例も多数ありますので、思い当たる症状がある方はまずは当院にご相談ください。

体質改善・症状改善を
目的とした栄養療法​

こんな症状はありませんか?

  • 疲れがとれない​
  • 風邪をひきやすい
  • アレルギー体質である
  • 集中力がない
  • 抜け毛が気になる
  • 乾燥してガサガサ踵である
  • イライラしやすい
  • 甘いものが大好き
  • アザができやすい
  • 寝つきが悪い、よく眠れない
  • 肌の調子が良くない
  • 冷え性である
  • 爪が割れやすい
  • 朝が起きにくい

上記のような症状が出る時には、栄養摂取にかたよりがある場合が少なくありません。そのため、日常の食生活の中で糖質接種の程度や栄養バランスを考えながら、サプリメントをプラスしていく「栄養療法」が有効なケースは多数あります。
ぜひ当院と一緒に栄養療法に取り組んで、疾患に負けない状態を作りましょう。​

食事指導の基本​

「バランスの良い食事」という一般のイメージはあると思いますが、それがすべての人に合っているとは限りません。そのためまず血液からデータを採取し、それぞれの患者さんの状態を踏まえた栄養療法を行うことが重要です。
基本的な考え方として、ミネラルやタンパク質の適切な接種と、血糖値をコントロールする必要があります。​

  • 血糖値の安定化

    身体の状態が良ければ、糖質が多い飲食物を取ったときの血糖値の上昇は緩やかです。しかし、栄養状態が悪いときや代謝のバランスに乱れがあると、血糖値の変化は急激になりやすいことが知られています。
    そのため、単純に糖質を制限するのではなく、全体のバランスを考えながらコントロールすることが重要です。​

    血糖値の乱高下に伴う症状​

    • 急な眠気や倦怠感​
    • 集中力の低下や抑うつ感、不安感​
    • 体重の増加
    • 中途覚醒など睡眠のトラブル
    • 甘いものへの渇望
    • 動機、頭痛、筋肉のこわばり
  • タンパク質の適切な摂取​

    「タンパク質」は筋肉や骨、腱や軟骨などを構成する重要な要素です。また、心の動きに関連する神経伝達物質や、健康に深く関連するホルモンや酵素などもタンパク質から生成されます。さらに、運動量やストレスが多い場合、疾患がある場合などは、通常よりもタンパク質の必要量は増えることが知られています。 このため当院は、血液検査から得たデータを踏まえて、タンパク質代謝の適性化を目指します。

    タンパク質の入れかえに
    トラブルが伴う症状​

    • 疲れやすい
    • 風邪をひきやすいなど免疫の低下​
    • 皮膚、爪、髪の毛などのトラブル
    • むくみやすくなる​
  • ミネラルの適切な摂取​

    「ミネラル」はタンパク質とは違って「無機的」な物質ですが、骨や歯を作るために人体に必要とされています。また、内臓の動きや細胞の状態を健康に保つためにもミネラルは使われます。そのため、健康な生活のために欠かすことができない成分なのです。​

    ミネラル不足に伴う症状​

    • 汗を多くかき熱中症になる​
    • 脱力感が続く​
    • 骨粗しょう症を引き起こす
    • 食欲不振になる​

身体に良い食べ物・
良くない食べ物​

  • 当院では、「身体に良い食べ物」と「良くない食べ物」を、科学的な知見を踏まえてアドバイスすることができます。好ましくない飲食物を取り続けていると、がんや動脈硬化、脳卒中などのリスクが上がります。
    現代社会には情報が氾濫していますので、ぜひ科学的に証明された情報を取得することを心がけましょう。

    身体に良い食べ物

    • 1
    • 2野菜と果物
      (フルーツジュースを除く)​
    • 3精製されていない炭水化物
      (麦飯、玄米、全粒粉など)
    • 4良い油
      (米油、国産なたね油、オリーブ油)
    • 5ナッツ
      (アーモンド、クルミ、カシューナッツ、ピーナッツなど)​

    身体に良くない食べ物​

    • 1牛肉や豚肉などの赤い肉
      (特にベーコンなどの加工肉)​
    • 2砂糖、ブドウ糖、果糖、液糖、人工甘味料​
    • 3小麦(グルテン)
    • 4乳製品(カゼイン)
    • 5サラダ油、天ぷら油(リノール酸の多い植物油)、マーガリン、ショートニング(トランス脂肪酸)
  • 毎日の食事のポイント

    肉より魚を

    当院では、食事を取る際に肉よりも魚をすすめています。魚を摂取すると動脈硬化や心筋梗塞の危険性が下がるからです。仮に肉を摂取する場合は、赤みの多い肉より鶏肉などの白身がおすすめです。また、ソーセージやハムなどの加工品は脳疾患の危険性を上げるというデータもあります。
    ただし、年齢が高い方の場合は、口腔機能の衰えを防ぐために肉類を含めたタンパク質を多くとるよう、アドバイスを使い分けます。​

  • 野菜を積極的に摂取​

    脳梗塞や心筋梗塞による死亡率は、野菜や果物の摂取が少ない人に高いことが知られています。そのため、毎日の食事の中に野菜や果物を意識的に取り入れていくことをおすすめします。
    大人であれば、1日に350gの野菜を取ることが望ましいですが、平均摂取値は300gにも達していないので、意識的に増やす必要があります。野菜の摂取方法は生でも良いですが、加熱したほうが多く取れることにも着目しましょう。​

  • 麦ごはんを主食に​

    炭水化物は種類によって健康への影響が異なります。同じ米や小麦であっても精製されている白米、うどん、パスタ、白いパンのような「白い炭水化物」は血糖値を上げ、脳卒中や心筋梗塞などの動脈硬化による病気になるリスクを高めることがわかっています。
    ​一方、麦ごはんは、身体に良い影響を与えることが数々の研究からわかっています。また、蕎麦(十割そばなどのように蕎麦粉の割合が高いものに限る)も身体に良い影響を与えます。​

栄養療法で扱う疾患の一例​

  • 生活習慣病(糖尿病)​

    生活習慣病は、食事のバランスの悪さやストレス、運動量の不足や喫煙の習慣、過度な飲酒などの生活習慣が多いほどリスクが上がります。
    代表的な生活習慣病としては、高血圧や糖尿病、脂質異常症などが知られています。このような疾患は初期には自覚症状が無いのでいつの間にか悪化する傾向があります。また、生活習慣病があると脳卒中や心筋梗塞などの重篤な疾患のリスクが上がるので、日常から注意することをおすすめします。​

  • 認知症​

    「認知症」になると、脳細胞の活動が低下することから、生活にも支障が生じるようになっていきます。例えば、記憶障害や理解力の低下、実行機能や判断力の低下のほか、見当識障害などの中核症状が起こります。さらに中核症状がもとになって、「行動・心理症状:BPSD」と呼ばれる二次的な問題も発生します。
    これらの症状があると、ご本人は不安や焦り、落ち込みなどが生じがちですし、人間関係の維持で困る局面もあるかもしれません。このように、脳はさまざまなことに関与しているので、日ごろからの注意が必要です。​

    認知症治療
  • 発達障害

    「発達障害」は疾患の一種と勘違いされるときもありますが、脳の発達特性によるものなので疾患ではありません。人によって特徴は異なるので一概には言えませんが、「一般的」とされる行動が極端に苦手だったりすることもあれば、特定の何らかのことが得意であるケースも見られます。そのバランスによっては幼児期から現れる特徴によって、周囲のお子さんと同様の行動がとりにくいこともあります。また幼児期にはあまり気にしていなくても、成長と共に苦手なことがあることに気づいて、生活するうえで困る例も見られます。​

  • 痛み(関節痛)​

    「関節痛」は、手足や腰などの関節で、曲げ伸ばしなどの動作をしたときに出る痛みを指しています。原因は非常に多様で、仕事やスポーツなどで負荷をかけ続けたことによる場合もありますし、ケガに起因することもあります。また、痛風やリウマチなどの疾患からくる痛みもありますし、近年は肥満や加齢からくる場合も増えています。
    痛みの程度は患者さまごとに異なりますし、場合によってはしびれを伴ったり、麻痺がおこったりするケースも見られます。​

  • 皮膚病変

    「皮膚病変」は名称の通り皮膚の表面で起こるものです。新生児に現れる無害なものもありますが、皮膚がんなどの可能性もありますし、白癬などの感染症的なケースも扱います。また、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染したことのサインとして現れるケースも考えられます。
    外観としては、突起状の場合やそうでない場合もありますし、表面がザラついていることやツルツルしていることもあります。また、周辺の病変が無い組織と比較すると、厚さや質感のほか、色合いに違いが出ることが多いです。 ​

  • その他、すべての病気やさまざまな難病に対し、
    栄養療法が効果を発揮することがあります。​
    ぜひ当院にご相談ください。​

院長から伝えたい
栄養療法のこと

現代人には、多くの病を抱えている方が増加しています。なぜそうなったのでしょうか。
私は、昭和60年に奈良医大を卒業しました。初期研修は米国式研修で有名な沖縄県立中部病院で研修を行いました。沖縄に行って驚いたことに肉、卵、小麦を食べると死ぬ人がいたことです。食物性アレルギーによるアナフィラキシーのためです。当時、本土ではこのような事聞いたことはありません。また、喘息などアレルギー疾患が多いでした。エコノミー症候群で有名になった下肢静脈血栓症、またそれによって命に関わる肺梗塞症も数例経験しました。また、日本人の癌である胃癌が少なく欧米型の癌である大腸癌が多かったです。
その後に地元の奈良に帰ってもそのような経験はしませんでしたが、20年前からそのような事がこちらでも起こるようになりました。何故でしょうか。​

食の欧米化

アメリカは、ご存知のように昭和47年に本土復帰しましたが、戦後アメリカに占領されていました。つまり欧米化が、本土より27年早いからです。
欧米人のように、パンや牛乳を食べると欧米人に多い病気になるのです。昭和60年頃、あまり診なかった欧米人の病である難病の潰瘍性大腸炎やパーキンソン病も非常にポピュラーになり、約20倍に増えました。小麦のグルテン、牛乳のカゼインの蛋白成分は非常に消化が悪く腸管を炎症させleakygut(腸漏れ)をおこし、未消化物、毒素などが血中に入って免疫反応を引き起こし、アレルギーや自己免疫疾患を生じると考えられています。癌に関して言えば、昭和60年ごろは10万人あたりの死亡者数は米国の6割程度だったが、毎年増加して20年前ごろに逆転して米国を抜き、米国の1.6倍になっています。一方、米国は年々下降していっています。何故でしょう。
日本の小麦は約90%が主に米国から輸入しています。テレビCMされている除草剤のランドアップ(グリホサート)は、米国では発癌性のため多数の裁判で負けているため欧米、ロシアでは使われなくなってきています。しかし、小麦に虫がつくために日本へ輸送される小麦に使われています。しかも、日本政府は2017年にその残留基準を緩和するぐらいです。​
食品添加物でも約1500種類も認められており、先進国の約10倍量と基準が甘い国です。またマーガリン、ショートニングのトランス脂肪酸、炎症を引き起こすリノール酸を多く含む天ぷら、サラダ油そして砂糖、人工甘味料も癌に関連があるでしょう。
​以上から添加物、トランス脂肪酸糖分の入っている加工品のパンを主食にして食べるのは問題があると思います。​

現代の栄養失調

本来の日本人の食事は健康的です。炎症を促進させる小麦(グルテン)、乳製品(カゼイン)、植物油(リノール酸豊富なサラダ、天ぷら油)、砂糖をあまり食べませんでした。一方、炎症を抑制する魚(ω3油)、大豆(味噌、納豆)、海藻、発酵食品を多く食べました。しかし、蛋白質、油が少なく血管が脆くなり脳出血が多くみられました。
現代は飽食の時代にもかかわらず新型栄養失調時代です。お腹いっぱいに食べていても栄養が足りていない人が多いです。つまり、カロリーは足りているがビタミン、ミネラルの微量栄養素が欠乏している人が多いです。
昭和の栄養失調は、3大栄養素の中のたんぱく質不足(鉄不足も伴う事が多い)によります。2000年頃から始まる平成の栄養失調は5大栄養素の中のビタミン、ミネラル特にミネラル欠乏によります。食の欧米化、加工食品を主にとる食の変化のため、ミネラル摂取の減少と添加物による体内ミネラル排泄によってミネラルが不足しています。そのため老若男女問わず精神の不安定、体の不調を訴える人が多くなっています。人の生体内の化学反応は酵素が重要で、酵素の構造はミネラルを中心にまわり、アミノ酸が取り巻く構造をしています。つまり、ミネラルが不足していれば酵素がうまく動かず、結局体も頭もうまく動かないのです。​

鉄について​

まずは鉄です。鉄は体の中に3-5g含まれています。鉄が少なくなれば貧血になり、息切れ、体の疲れなどが出ます。
血液検査ではヘモグロビンで測れます。よってヘモグロビンが正常範囲内なら問題ないと判断されるのが一般的ですが、鉄はヘモグロビン以外にも体のエネルギーを作るミトコンドリア及び神経伝達物質であるドーパミン、セロトニン生成にも必要な補因子です。したがって鉄が不足すれば体のエネルギー、頭のエネルギーが精神的に不安定になるのです。
うつ病と思われた方、お年寄りで認知症と言われ不穏で不安定の方、発達障害、自閉症の子供、体の痛みが強い方など不安定な方は小麦や砂糖を食べないで鉄が不足していれば鉄を補正するとよくなることが多いです。
鉄剤は消化器症状が強く飲めない人が多いですが、鉄不足かは血中の鉄の貯金量を示すフェリチンで判断します。フェリチン値20以下の不安定な方は新しい三価の鉄剤フェージェクトを点滴すると劇的によくなる事が多いです。女性は生理があるために、生理がある人は多くの人は不足しています。なお、鉄は炎症を引き起こす酸化剤のため鉄が足りている人は全体に飲まないように。日本ではマルチサプリには鉄が入っていますが、サプリ先進国のアメリカでは男性用、女性用と別々にマルチサプリがあり男性用には鉄が入っていません。​

亜鉛について​

次に亜鉛です。亜鉛は体内に2g含まれており、約300以上の酵素反応に関連しています。味蓄細胞の分裂(障害)に関係しており、それによる味覚障害や、精子の増殖のためセックスホルモンで有名です。
また皮膚の細胞分裂に関連しているため皮膚のトラブルに効きます。また爪、髪の成長に関係しています。抗炎症ミネラルでアレルギー疾患にも効きます。​
現代人は摂取が少なく、食品添加物が亜鉛を体内から排泄させるためほとんどの人が亜鉛不足です。精神的に不安定の人は痛みの訴え、皮膚のトラブルが強い人は亜鉛が低く銅が高い人が多いです。銅はノルアドレナリンの生成酵素の補因子のため銅の高い人はノルアドレナリン、アドレナリンが高く不安定です。亜鉛は銅の拮抗ミネラルのため亜鉛を増やせば銅が低下し落ちつき安定します。

マグネシウムについて

そしてマグネシウムです。体内に25g含まれており特に重要で現代人が不足しているミネラルです。
60%が骨に40%が筋肉、臓器に存在しており特に心臓、脳に含まれています。抗炎症作用があり生活習慣病のマグネシウムでマグネシウムの摂取が多いと、血圧が下がり、脳梗塞、心筋梗塞、糖尿病、大腸癌 骨粗鬆症もかかりにくいです。不整脈の治療に使ったり、頭痛、うつ病にも効きます。中年以降によく起こるこむら返りに効きます。

ミネラルは重要です。ミネラル摂取するために、麦飯、そば、オートミールを勧めます。そして3点セット(納豆、ごま、海藻)を少しでも毎日、そして電動ミルで煮干し、鰹節、切り干し昆布、干し椎茸を粉末にして混ぜたものを使用することを勧めます。

食事療法の要点​

  • 1小麦(パン、うどん、ラーメン)を主食として毎日食べない。主食は2-3割の麦飯、そば、オートミール。​
  • 2乳製品(牛乳、チーズ、ヨーグルト)を毎日食べない。
  • 3お菓子、甘い飲み物(砂糖、ブドウ糖果糖溶液、人工甘味料)を控える
  • 4納豆、卵は一日2−3個、魚、鶏肉、豚肉など毎食蛋白質を食べるように
  • 5三点セット(納豆味噌、海藻、ゴマ)は毎日
  • 6出汁は煮干し、鰹節、刻み昆布、乾燥椎茸の粉末で
  • 7加工品をできるだけ避け野菜、肉、魚、卵などの生鮮食品を使った伝統的な和食